【特集】コロナ禍の日本語教育 vol.2 加藤駿さん(日本語教育機関事務職員)


新型コロナウィルスの感染拡大により、私たちの日常は大きく変化しました。日本語教育も例外ではありません。これまで『日本語教師の履歴書』に登場してくださった方々に、コロナ禍の日本語教育についてうかがいます。第2回は加藤駿さん。2020年8月25日にお話をうかがいました。


《今回の「日本語教師」》 都内日本語学校事務職員。加藤駿さんの『日本語教師の履歴書』インタビューはこちら


「一件一件の問題がヘビーになっている」
―コロナ禍での留学生に対する支援

瀬尾ま 新型コロナウィルスでお仕事にどのような影響が出てきていますか。

加藤 一番大きいのは、学生がいなくなってしまったことです。私の働いている日本語学校には2学年あって、いまなら2019年に入ってきた学生と2020年に新しく入ってくる学生がいるはずなんです。でも、実際には2020年に入ってくる学生がおらず、1学年丸々いなくなってしまったので、経営的にも大変になっているようです。他の学校さんの話を聞いていると、1学年分いなくなってしまったので、これ以上は経営が続けられなくて、来年は閉校してしまおうと考えているところもあるようです。

瀬尾ま 加藤さんの学校はどのように生き残ろうとされているんですか。

加藤 うちだと、オンライン授業をプライベートレッスンやグループレッスンという形で販売しようとしています。私は担当していないんですが、ちょうどウェブサイトを立ち上げて、少しずつ試験運用を始めているようです。

瀬尾ゆ 海外に売り込むんですか。それとも、日本に来るはずだった人にオンラインの授業を提供しているんですか。

加藤 留学する前の待機状態の、いわゆる待機学生と、海外で学校に通えない人たち向けの授業の両方をやっているみたいです。今まで日本語学校はスクーリングしかできなかったんですけど、オンライン化されたことによって、地方や海外の学生に届くようになったのは大きいようです。聞いたこともないような小さい国から問い合わせがあったりもしたそうです。

瀬尾ゆ コロナになってまだ半年も経っていないぐらいですが、すぐにオンライン化できたんですね。

加藤 そうですね。今年の3月には、新しい学生が入ってくるのは絶望的だという話が出ていたので、その辺りからもう動いていましたね。

瀬尾ま 2019年から在学されている学生さんに向けては、スクーリングでやられているんですか。

加藤 スクーリングの人もいるんですが、毎月「これ以上日本にいることができないから帰ります」って帰国する人がいますね。母国の経済も打撃を受けていて、これ以上学費にお金を払えないと言ってやめていく人もいます。それに、就職するにしても、有効求人倍率もどんどん下がってきているので、学生たちも夢が描けなくなってきているみたいです。

瀬尾ゆ 加藤さんの事務のお仕事はどうですか。

加藤 私は学生のビザ関連の業務を担当していたので、しょっちゅう入管に行って、「春節で中国に一時帰国して日本に戻れなくなった学生がいて、もうすぐビザが切れるんですけど、どうしたらいいですか」とか、ケースごとに相談をしていました。あと、飛行機代が高すぎて母国に帰るに帰れない学生がいたりとか。学生数が減ったぶん、多少は仕事が楽になった面はありましたが、一件一件の問題はヘビーになっています。

瀬尾ま 今まで対応したことがない案件ですもんね。

加藤 そうですね。さきほど話したビザにしても、国の方針が日々変わっていくので、学生から相談があると、国の方針をまず調べるところから始めて、対応するものがなかったら該当する省庁や大使館に問い合わせをして、個別対応をしています。

「オンライン化が一気に進んだのは本当におもしろい」
―オンラインでも変わらないこと、オンラインによる可能性

瀬尾ゆ 今のお仕事で、コロナ後も変わらないところはあると思いますか。

加藤 そうですね。効率は悪いなとは思うんですが、入管に出す書類やビザ関係の書類はどうしてもハンコや本人直筆のサインが必要なので、対面でしかできないのかなと思います。それに、ZOOMだとどうしてもことばだけのやりとりになってしまうので、やはり対面は有効だなと思うときがあります。

瀬尾ゆ というのは、どういうことですか。

加藤 例えば、学生と難しい相談をするときには筆談もできるし、実際に目を見て話すというのは人間関係を作るためにも有効なのかなと思います。

瀬尾ま ZOOMで話すのとは少し違いますか。

加藤 ZOOMでは初対面でゼロから関係を作っていくのは難しいなと感じます。何回か直接会って話をしていると、この学生は何か隠していることがあるのかなとか、そういうのがわかってくるんですよ。それに、服や靴が汚れていたら、ちょっと忙しいのかなとか、そういうのも推測ができるんですよ。

瀬尾ま いろいろ見ているんですね。

加藤 やっぱり見られる情報を全部見ながら判断していることもあるので、画面越しだけではわからないかなと思いますね。あとは約束したことをちゃんとしてきたかとか、行動で信頼関係を互いに作っていくようなところもあるのかなと私は思っています。なので、対面でっていうのは、やっぱり一定量は必要だなとは思います。

瀬尾ま それがないと事務として支援することが難しくなるんですね。

加藤 難しいですね。それに、法務省は実際に学生が教室に来て出席しているかをもとにビザを出すかどうか判断しているので、その法律が変わらないかぎり完全にオンラインにすることは難しいかなと思いますね。

瀬尾ゆ 逆にこれまで大変だったことが、コロナで新しい可能性が見えたというようなことはありますか。

加藤 オンライン化が一気に進んだのは本当におもしろいなと思いますね。今までリーチできなかったところ、海外の小さな国で、なかなか日本語を教える先生がいなかったような国でも日本語が学びやすくなりますよね。今後ICT化がどんどん進んだら、それこそ夢のようですけどVR空間で日本体験ができるかもしれないですね。そういった新しい挑戦ができるようになったのは本当におもしろいことだなと思っています。

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